GAIAで求められた電離圏におけるレイリー・テイラー不安定性の線形成長率の日々変動及び季節変動
- Keywords:
- Equatorial plasma bubble, Occurrence rate, Daily variation, Atmosphere-ionosphere coupled model, Rayleigh-Taylor instability, Linear growth rate
赤道プラズマバブルは、電離圏の電子密度が局所的に極端に低い領域であり、電離圏プラズマ中のレイリー・テイラー(R-T)不安定性によって励起されると考えられている。赤道プラズマバブルは、衛星を用いた測位などに悪影響を及ぼすことから、その予測は宇宙天気予報における重要課題となっている。本研究では、情報通信研究機構が中心となって開発している数値モデル「全大気圏-電離圏結合モデル」(通称GAIA: Ground-to-topside model of Atmosphere and Ionosphere for Aeronomy)を用いて、2011年から2013年までの期間について、電離圏プラズマに対するR-T不安定性の線形成長率を求めた。このモデルは下層大気で励起されて熱圏領域まで伝搬してくる大気波動を再現するとともに、その大気波動が熱圏ダイナミクスや電離圏に与える影響を調べることができる。最近の研究では、この下層大気起源の電離圏変動によってR-T成長率が変化し、その値が増大した場合に赤道プラズマバブルの発生につながる可能性が示唆されている。我々は、GAIAの大気圏モデルの30km以下の高度領域に気象再解析データを導入することにより、実際の日々の大気圏、電離圏の変動のデータベースを構築した。本研究ではこのデータを用いて、2011年から2013年の期間について、各日毎にR-T成長率の最大値を求め、それを観測から得られた赤道プラズマバブル発生日と比較した。赤道プラズマバブル発生日のデータは、赤道大気レーダー(EAR)及び全地球測位システム(GPS)の観測データから導出した。比較の結果、R-T成長率が高い値を持つ日は、赤道プラズマバブルが実際に発生した日に一致する傾向があることがわかった。このことは、全大気圏-電離圏結合モデルを用いることによって赤道プラズマバブルの発生を予測できる可能性を示すものである。