日本語要旨

2014年7月28日に東南アジアで観測された時期外れの日没時電離圏F領域不規則構造;1. 地磁気擾乱の影響の検討

地球電離圏は、下層大気と宇宙空間を繋ぐ遷移領域であると同時に、衛星電波が遅延等の影響を受ける伝搬経路でもある。特に、局所的なプラズマ密度の不規則構造を伴う電離圏擾乱が発生した場合には、電波の振幅、位相の急激な変動(シンチレーション)が生じるため、GPS等による電子航法に深刻な障害を及ぼす。赤道電離圏で発生するプラズマバブルと呼ばれる現象は、深刻なシンチレーションを引き起こす原因として知られているが、その発生機構については未だ未解明な部分が多い。大まかな発生傾向については、地球磁場の偏角と日没境界線の関係により説明がなされており、各経度域における季節変化については理解が得られているが、同一季節内においても、発生の日々変化が非常に大きく、その予測は非常に難しい。本論文では、2014年7月28日に東南アジア上空で観測された電離圏不規則構造について、その発生原因について検討している。通常この季節では、アフリカと太平洋上空においてシンチレーションが強くなる傾向があり、東南アジア上空ではほとんどシンチレーションは発生しない。ところが、図に示すように、7月28日には東南アジア上空でシンチレーション強度が高くなっており、アフリカと太平洋上空ではシンチレーションが発生していない。通常時とは異なる何らかの影響を外部から受けて、このような時期外れの現象が発生したものと考えられる。電離圏のさらに外側の磁気圏からの影響について検討した結果、明確な関連は見られなかった。続編(2. Forcing from below?)論文では、下層大気からの影響について詳細に考察する。