日本語要旨

中国における旱魃・洪水に伴う地域的水蒸気収支

本論文では,中国の6つの地域における1961から2011年の水蒸気収支と,旱魃・洪水発生の長期変動を解析した.水蒸気は冬季には主に東西方向に運ばれ,夏季には南北方向の輸送が卓越する.解析期間において,冬季には西端からの流入,東端からの流出が共に若干弱くなる傾向にあり,中国東部の各地域内における水蒸気総量は,長期的にはあまり変わっていなかった.他方夏季では,南方からの水蒸気流入の減少が,北方への水蒸気流出の減少に比べてやや少なく,各地域内での水蒸気収束量が増加し,近年は,洪水がより起こりやすい傾向にあることがわかった.またエル・ニーニョの最盛期にあたる冬とその後の衰退期の夏には,旱魃リスクは小さく,洪水リスクが大きくなる傾向がみられた.ラ・ニーニャ時には逆の傾向になるものの,影響の程度は小さくなる.