日本語要旨

防災科研Hi-netとKiK-net記録の地震波干渉法解析に基づく2014年長野県北部の地震(MW6.2)に伴う地震波速度変化の深さ依存性

大地震に伴う地震波速度変化を異なる深度において推定するために、われわれは防災科学技術研究所のHi-netとKiK-netの地震波形記録を用いて地震波干渉法解析を行った。使用したHi-net観測点は、2014年長野県北部の地震(MW6.2)の震央から26km北東に位置し、地震計は深さ150mに設置されている。KiK-net観測点は鉛直強震計ペアから構成されており、強震計の一つはHi-net地震計に併設され、もう一つはその直上の地表に設置されている。我々は、長野県北部の地震前後の期間について、KiK-net地震波形記録の地表/地中デコンボリューション波形(DCW)とHi-net雑微動記録の自己相関関数(ACF)とを計算し、地震波干渉法解析から地震前後の速度変化と回復過程を推定した。DCWは2つのKiK-netセンサの間の速度変化、すなわち地表から深さ150mまで(浅部領域)の速度変化を検出するのに対し、ACFは浅部領域だけではなく150mよりも深い領域(深部領域)も含めた広い範囲の平均的な速度変化を検出する。深部領域での速度変化を浅部領域から分離して推定するために、われわれは波動伝播数値シミュレーションを用いてACFの深部領域の速度変化に対する感度を見積った。

解析の結果、浅部と深部領域での速度変化率は、地震発生から1週間以内でそれぞれ-3.1%および-1.4%と見積もられた。地震発生の1週間後から4か月後までの期間では、これらの値はそれぞれ-1.9%および-1.1%まで回復した。岩石実験結果との比較から、これらの速度低下は地殻変動による静的歪ではなく、強震動による動的歪によるものと考えられる。浅部での地震波速度の回復が深部のそれよりも早いのは、回復速度が強震動による媒質の初期損傷の程度に影響を受けるためと考えられる。観測された速度回復には、岩石実験で報告されている、損傷を受けた岩石がゆっくりと平衡状態に向かおうとする現象(スローダイナミクス)との類似点が見られる。