山岳域における大気化学観測に関する総説
- Keywords:
- Atmospheric observation, High-altitude station, Long-range transport, Seasonal cycle, Long-term trend, Biomass burning, Anthropogenic pollution
地球の気候や環境にとって重要な役割を果たす微量ガス成分やエアロゾル成分の自由対流圏中における変化および変動を把握し、その要因を理解することは、現在の大気化学研究における重要な課題である。山岳域の大気観測所は人為的な排出源から遠く離れているため、こうした地球規模のベースライン的変動を観測するのに適した場所である。それゆえ、山岳域における大気化学観測は、人間活動から排出された大気汚染物質や森林火災、砂漠から放出されたガス・エアロゾルの長距離輸送に関する研究や、全球および領域化学輸送モデルの評価にも用いられている。本論文では、反応性微量成分(例えば、対流圏オゾンやその前駆体である一酸化炭素、窒素酸化物、非メタン炭化水素)に着目し、過去および現在において、世界中で行われている山岳域での大気化学観測についてまとめた。観測手法やモデリングの発展により、ベースライン的変動や長距離輸送の気象学的メカニズムが徐々に明らかになりつつある。最後に、山岳域での大気化学観測の今後の方向性についても述べる。