横浜市南部の堆積物コアから得られたオルドバイ正磁極亜帯上限の地磁気逆転記録
- Keywords:
- Geomagnetism, Paleomagnetism, Geomagnetic polarity transition, Olduvai subchron, VGP path, VGP cluster, Reversal, Relative paleointensity, Sediment core
横浜市南部に分布する前弧海盆堆積物の上総層群野島層(下部更新統)で掘削した全長106.72 mのコアから,オルドバイ正磁極亜帯上限の地磁気逆転記録を得た.解析した試料は,コア深度85~50 m間の泥質岩で,766層準から試料(discrete sample)を採取した.古地磁気記録は,段階交流消磁を行って復元し,古地磁気強度は,各試料の自然残留磁化(NRM)強度を非履歴性残留磁化(ARM)強度で規格化し,相対古地磁気強度として求めた.岩石磁気の結果から,古地磁気記録の主な担い手は,擬似単磁区(PSD)粒子,あるいは単磁区(SD)粒子と多磁区(MD)粒子の混在した(チタノ)マグネタイトであると推定された.
地磁気逆転時の極性遷移を示す仮想地磁気極(VGP)の位置の大きな変動は,コア深度66.99~63.60 mの間に記録されていた.同じコアで求めた浮遊性有孔虫化石Globorotalia inflataの酸素安定同位体比変動による年代モデルから,この区間は1784.4~1779.9 kaとなり,極性遷移期間は約4500年と算出された.本研究で得られた極性遷移過程の仮想地磁気極には,特定の経度帯を通って移動する傾向は見られなかったが,A)日本近傍,B)中東,C)北アメリカ東部~北大西洋,D)オーストラリア南沖,E)南大西洋南部~南アフリカ沖の5地域に,クラスターとして分布する傾向が見られた.仮想地磁気極がクラスターとして観察された地域は,現在の非地軸双極子磁場(NAD field)の鉛直成分の中心が地表に現れる領域とよく一致していた.相対古地磁気強度は,地磁気逆転が始まる約1000年前に急速な減少が始まり,12000年かけて逆転前の最大強度まで緩やかに回復した.仮想地磁気極の位置が大きく変動した期間の相対古地磁気強度は,逆転前の最大強度の約12 %に減少していた.