核共鳴非弾性散乱と第一原理計算から決定された状態密度に基づくブリッジマナイトの音速
- Keywords:
- elasticity, perovskite, nuclear resonance, sound velocity, lower mantle, ab initio calculations
ブリッジマナイトの音速を実験室において測定する事は、下部マントルの化学組成を明らかにするためのひとつの鍵となる。われわれは今回、ダイヤモンドアンビルセル中で核共鳴非弾性散乱測定(NIS)を用い、1つのメージャライト組成(Mg0.82Fe0.18SiO3)と5つのブリッジマナイト組成(Mg0.82Fe0.18SiO3, Mg0.86Fe0.14Si0.98Al0.02O3, Mg0.88Fe0.12SiO3, Mg0.6Fe0.4Si0.63Al0.37O3, Mg0.83Fe0.15Si0.98Al0.04O3)について、室温で最大89 GPaの圧力までのデバイ音速を決定した。NISによって決定されたメージャライトのデバイ音速はブリルアン散乱測定や超音波法によって得られた文献値と整合的であった。一方、ブリッジマナイトのデバイ音速は同様の手法で得られた文献値よりも有意に低かった。われわれはMgSiO3とFeSiO3ブリッジマナイトの部分状態密度と総状態密度を、密度汎関数理論を用いて計算した。その結果、実験データと同様のアプローチ(すなわち、D(E)/E2においてエネルギーがゼロへ向かう極限)を用いた場合、再スケールされた(reduced)状態密度から得られた音速は、どの部分状態密度を用いるかによらず、各相において同じ音速が得られた。さらに、われわれはこのアプローチに基づくデバイ音速が全弾性テンソルから計算された値と一致することも明らかにした。計算された状態密度とNISから得られた状態密度を比較すると、実験から得られた状態密度は低エネルギーにおいて強度が大きくなるため、状態密度の勾配に差異を来し、その結果低い音速が得られることが示された。この効果は本研究で調べられた全てのブリッジマナイト試料に存在した。