海洋堆積物中に分散した火山灰を定量するための地球化学的アプローチ
- Keywords:
- Dispersed ash, Caribbean Sea, Equatorial Pacific Ocean, Northwest Pacific Ocean, Ash layers, Volcanic eruptions, DSDP, ODP, IODP
火山灰はこれまで長年の研究で海洋堆積物中に見出されており,広範囲に運搬されるために地球上のどこにでも分布することを考えると,その存在は普遍的であると言って良い.しかしながら堆積物の構成要素としては,火山灰は広い意味での「アルミノケイ酸塩」成分に分類されるがゆえに,非常に細粒の火山灰物質の有無や,特にその組成を同定することは難しい課題となっている.この難しさのために,多くの火山灰研究は,様々な場所や時代において堆積層の中に見つかる周囲とは明瞭に識別される層(つまり,厚さ数mmから数cm以上の火山灰層やそれぞれに含まれる火山ガラス)に着目して,その存在をいかにして数々の地球上のプロセスと関連づけるかに注力してきた.それに比べて,堆積物に分散・混合した火山灰は,あまり良く研究されてこなかった.しかしながら,堆積物に分散・混合した火山灰は,堆積層中の全火山灰量に対して大きな割合を占めている.このような分散・混合した火山灰は,地球化学的手法に統計的手法を組み合わせることで,堆積物中に元来含まれる火山灰の一部として同定することが可能である.この論文では,これらの地球化学的・統計的テクニックの進歩についてまとめ,カリブ海,赤道太平洋,北西太平洋において,堆積物に分散・混合した火山灰の定量を行ったケーススタディを紹介する.これらの地球化学的研究(およびスミアスライドによる堆積学的検討)の結果,局所規模あるいは地域規模の火山弧から供給された火山灰が,海洋の広い範囲にわたる堆積層中の重要な成分となりうることが,どのケースからも明らかである.