日本語要旨

赤道スプレッドF層擾乱の基本単位としての湧昇

夜間の赤道付近のF層のプラズマ構造は、しばしば赤道スプレッドF (equatorial spread F: ESF) と呼ばれ、時間的にも空間的にも不均質である。観測によればESFはF層底部において斑状に分布する。また、このときF層にはプラズマが気泡状に減少した赤道プラズマバブル(equatorial plasma bubbles: EPBs) が形成され、しかもそれらは群をなして出現する傾向がある。もう一つの観測的特徴に湧昇がある。これはF層底部における等密度線の局所的な上方への湾曲として記述されてきた。興味深いことに、ESF斑、EPB群、湧昇のそれぞれの東西幅は似ている。さらには、いずれも東西非対称性を示す。

本論文では、ESF斑はEPB群の底部に対応するものであり、そしてどちらも湧昇中で起きる一連の電気力学的過程の産物であることを示す。この過程は次の3つの段階を経る。すなわち、 (1) 日没後のF層上昇期の湧昇の強化、(2) 湧昇頂部からのEPBの放出の開始、(3) 湧昇内でのプラズマの構造化である。湧昇はESF班とEPB群の形成の原因となっており、これらは夜間の赤道電離圏で起きる一体の擾乱とみなすことができる。