JUNOで期待される地球ニュートリノ信号
- Keywords:
- Geoneutrino flux, JUNO experiment, Earth reference model, Earth composition, Heat-producing elements, Reactor antineutrinos
地球ニュートリノを検出することで、地球の組成および地球の放射性起源のエネルギー収支に関する拘束条件が得られる。最近、我が国のKamLANDおよびイタリアのBorexinoを用いた反電子ニュートリノの測定実験から、地球内部のウラン(U)およびトリウム(Th)の量と分布を反映する地球ニュートリノフラックスが報告された。JUNOニュートリノ検出器は、20 ktonの液体シンチレータ検出器として設計され、各々の熱出力が約18 GWで計画されている陽江および台山原子力発電所から約53 kmの場所にある中国南部の地下実験施設に建設される予定である。JUNOの目標は、大型検出器を使って、原子炉からの反ニュートリノ信号を高い統計精度で収集することだけでなく、原子炉からの高い強度の反ニュートリノから非常に弱い地球ニュートリノ信号を識別するという問題に取り組むことである。JUNOにおいて予測される地球ニュートリノの信号強度は、モデリングから、 TNUと計算される。検出器の周囲(半径約500 km以内)の上部地殻の組成モデルの不確定性から見積もりに幅が出ている。本論文では信号の44%に寄与すると推定される検出器周囲の6° × 4° の狭い範囲の地殻に特に着目する。原子炉反ニュートリノの世界標準モデルに基づいて、地球ニュートリノのエネルギーウィンドウにおける原子炉反ニュートリノ信号強度と地球ニュートリノ信号強度の比は、2013年に稼働していた原子炉を考慮すると0.7と推定されるが、将来の原子力発電所の寄与を加えると8.9に達する。マントルの組成について有益な情報を得るためには、上部地殻の地球化学的特性に注目しつつ、予想される地球ニュートリノ信号全体の47%を作り出し、不確定性の主要因となる検出器近傍の地殻内部のUおよびThの存在量および分布のモデリングの改良が必要である。