オーロラ爆発に伴うGPSシンチレーションの観測
- Keywords:
- Auroral ionosphere, GPS scintillation, Auroral substorm, Ionospheric density irregularities
米国のGlobal Positioning System(GPS)に代表される全球衛星測位システムは、その信号が通過する電離圏のプラズマ密度の変動によって影響を受ける。特に、受信信号の振幅および位相に見られる電離圏起源の乱れは「電離圏シンチレーション」と呼ばれ、赤道域を中心に研究が行われてきた。本論文では、北極域で発生するオーロラ爆発現象(オーロラサブストーム)がどのような電離圏シンチレーションを引き起こすのかについて、ノルウェー北部トロムソ(地理経度19.20度、地理緯度69.60度)に設置されている全天カラーデジタルカメラとGPSシンチレーションモニタリングシステムを用いた観測的研究を行った。特に、成長相、爆発相、回復相の3つに分けられるオーロラ爆発の各フェーズにおいてGPS測位信号の振幅、位相がどのように変動するかに着目し、2009年11月19日に観測された小規模な孤立型オーロラ爆発についての事例解析を行った。解析の結果、爆発相の開始後数分にわたって、測位信号の位相に顕著なシンチレーションが現れることが明らかになった。これに加え、位相シンチレーションが観測されるときには、測位電波の経路を、明るいオーロラが速いスピードで通過していたことも分かった。これは、オーロラ爆発に伴う電離圏プラズマの激しい時間変化が位相シンチレーションの発生に重要な役割を果たしていることを意味する。位相シンチレーションとは対照的に、オーロラ爆発の全てのフェーズにおいて、測位信号の振幅にはシンチレーションが生じないことが示された。赤道域におけるこれまでの観測から、振幅シンチレーションは、電離圏プラズマの空間的不規則構造による電波の回折に起因すると考えられている。このことは、北極域においては、電離圏プラズマの空間的非一様性ではなく、その激しい時間変化が、測位信号に影響を与えるということを示している。