日本語要旨

交互砂州の動態に対する樹木成長率の影響に関する数値解析

交互砂州は洪水時に堆積と侵食を繰り返しながら下流へ移動する.流量が少ない時期には,交互砂州の上に樹木が繁茂し,結果として砂州の移動速度は減少する.この時,砂州の波長も増大することが知られている.樹木は,地上部分(幹や葉)が流れの抵抗となる効果と,樹木の根が土砂を緊縛し輸送量を減衰させる効果の2つを有している.本研究では,上述の2つの効果が砂州の移動速度,波長,波高に及ぼす影響を数値解析により分析した.その結果,樹木の地上部分と根の両方の影響が砂州移動速度を低下させ,砂州波長を増大させることが確認された.樹木地上部の影響により砂州上の流速が低下すると,水路の反対側の流速と局所的な侵食が促進される傾向があり,結果として砂州波高は増加した.洪水流量が低い場合,砂州上部の樹木が流されずに残存する.樹木の残存が続き,樹齢が増加すると,樹木の幹は太くなり,根は深くなる.このような状況では,樹木の(種の違いによる)成長速度が,流れ,土砂輸送,河川地形に与える影響は大きい.一方,大きな洪水が毎年のように発生する場合,樹木は洪水流により流され,成長が阻害されるため,樹木の成長速度が河川地形に与える影響は小さいことが分かった.