日本語要旨

InSARおよびGNSS時系列解析によって明らかになったレイテ島のフィリピン断層における非地震性すべりと地震性すべりの相互作用

活動断層のすべりは空間的に不均質であり、断層区域ごとに異なる特徴を示す。ある区域は地震的に固着している一方、他の区域では異なる速度で非地震性すべり(クリープ)が起こる。このような違いは断層系全体の地震ハザードに影響を与え、地域ごとに異なる地震リスクをもたらす。そのため、断層に沿ったすべり速度分布の解析は、断層モデルの高度化や地震ハザード評価、減災策の改善に不可欠である。本研究では、2016年3月から2023年7月におけるレイテ島でのフィリピン断層の時空間的すべり速度分布を、ALOS-2/PALSAR-2データによる干渉SAR(InSAR)時系列解析とGNSS変位時系列を組み合わせて求めた。その結果、(1)2017年7月6日の地震に伴う地震時および余効変動、(2) 区域によって異なる35〜55 mm/yrの断層クリープ速度が得られた。特に北部においては、2013年3月以前のInSARおよび現地観測による推定値よりも高いクリープ速度が得られた。これは、10年単位の時間スケールで、クリープ速度が時間的に変化していることを示唆する。また、北端部と中央部では、浅部にすべり欠損域が認められた。北端部の浅部すべり欠損域では、2023年1月15日に深さ約1 kmでMw 4.7の地震が発生し、フィリピン断層の地表トレースに沿って約8 kmの地表断層(最大変位約2 cm)が出現した。この浅部すべり欠損が地震発生に寄与した可能性がある。