軽石の浮遊時間:水は軽石内部にどう浸透するか?
- Keywords:
- 軽石, 浮遊, 間隙, 水浸透, 毛管浸透, 封入空気
軽石は多孔質で密度が小さく,水に浮遊するものも多い。乾燥状態での着水から沈降を開始するまでの浮遊時間は軽石によって異なり,サイズが大きいほど長時間浮遊する傾向があることが知られている。浮遊軽石現象が知られる1914年の桜島大正噴火の降下軽石を対象として,浮遊時間と間隙(空隙)構造との関係および軽石内部への水浸透の進み方を調べた。試料サイズ・間隙率が異なる5つの軽石(整形前後を含め10試料)を水に浮かべ,浮遊時間を計測した。その結果,即時に沈降するものから,10日間以上浮遊するものまで大きな違いが生じた。これらの試料については,浮遊時間と試料サイズ(2~39 cm3)との間に明確な相関は認められなかった。試料内部の間隙は,孤立間隙,輸送間隙,行き止まり間隙,連結(開放)間隙,全間隙に分類できる。各間隙率を測定した結果,行き止まり間隙率,連結間隙率,全間隙率が浮遊時間と強い相関を示した。間隙は大小さまざまな口径を持つ。口径ごとの水浸透の進み方の違いを調べるために,3つの異なる条件下(試料を10分間水に浸す/3日間水に浸す/全ての間隙を水で飽和させる)で水を浸透させた軽石に対して,ガス圧をかけて間隙水を押し出し,段階的にガス圧を変化させることにより,各口径の間隙中の水量を測定した。その結果,初期の急速な毛管浸透が進行する過程では,大口径の間隙に優先的に水が浸透することがわかった。間隙率(行き止まり間隙率,連結間隙率,全間隙率)が低い試料は,初期過程で浸透する水量でも浮力を失うため,短時間で沈降すると解釈できる。間隙率が高い試料はすぐには沈降しないが,長時間経過すれば更に水が浸透し,沈降する。急速な毛管浸透後の過程では,輸送間隙よりも行き止まり間隙により多くの水が浸透することがわかった。この過程では,行き止まり間隙とみなされる間隙の角の部分や壁面に優先的に水が浸透することに加えて,間隙内に封入された空気が水に溶けて縮小することにより水が浸透しているらしい。