太陽風プラズマ密度の中程度および極めて高い地磁気擾乱に対する依存性:潜在学習を用いた解析からの洞察
- Keywords:
- Space weather modeling, Solar wind conditions, Geomagnetic activity, Machine learning (potential learning)
本研究では、潜在学習(Potential Learning: PL)という、主に社会科学研究で用いられてきたニューラルネットワーク手法を宇宙天気分野に応用し、惑星間空間磁場(IMF)のBz(南北)成分が南向きである際の太陽風の状態とKp指数で表される中程度(2-〜5+)から極めて高い(6-〜9)地磁気活動度との関係を明らかにした。PLは、分散に基付いて計算される”潜在性”と呼ばれる指標を用いて学習を行う。学習完了後、入力パラメータの潜在性を確認することにより、出力に最も影響を及ぼす入力パラメータを抽出する事ができる。本研究では、中程度の地磁気活動に対する太陽風プラズマ密度の依存性にも注目した。太陽風密度がKp指数に依存するのが、どの程度の大きさの地磁気活動度からであるのか、これまでの研究では十分に理解されていなかった。Kitajima and Nowada et al. (2022)のPL解析では、南向きIMF条件下で極めて低い(0〜1+)か極めて高いKpにおいて、太陽風速度が最も影響することが明らかにされていた。本研究においても、1998〜2019年(太陽周期23〜25期初期)におけるIMF三成分、太陽風速度、プラズマ密度を入力として用いた結果、太陽風速度が中程度および極めて高いKpに対する最重要パラメータとして抽出された。しかし、太陽風密度の潜在性の値はKitajima and Nowada et al. (2022)が示した値よりも3.5倍大きく、太陽風密度のKpにおける依存性が無視出来ないことが示唆された。さらに全Kp値について、太陽風速度と密度の統計的関係を調べ、中程度以上のKpでは、太陽風が遅くても密度が大きければ、地磁気活動が高まる傾向があることが判明し、太陽風密度も顕著に地磁気活動に寄与していることが示された。本PL解析と統計的検証により、太陽風密度は中程度以上の地磁気活動段階からKpを制御し始めることが明らかとなった。本研究から得られた成果は、太陽風条件と地磁気活動の一般的関係性の更なる理解およびIMF条件下での地磁気活動予測に寄与することが期待される。