日本語要旨

スーパーコンピュータ「富岳」を用いた大規模アンサンブル・高解像度予測研究による大気科学における成果

本論文は、日本のフラッグシップスーパーコンピュータ「富岳」を活用し、日本とその周辺地域および全球を対象に、大気モデルまたは大気–海洋結合モデルによる大規模アンサンブル・高解像度シミュレーションを実施した3年間のプロジェクトの成果をレビューする。プロジェクト名は「防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測」であり、主な目的は数値天気予報の精度向上と確率的予測情報の提供である。地球温暖化に伴う集中豪雨や熱帯低気圧などの極端気象の激甚化に対応するため、数分から数週間、さらには季節スケールまでを対象に、高解像度の大規模アンサンブル予測実験を行った。本プロジェクトでは、高性能計算を活用し、効果的な防災・減災に資する事前情報の提供を可能とする確率的予測の実現を目指し、①メソスケールおよび領域モデルによる研究、②グローバルから季節スケールまでの研究、③環境研究における革新的アプローチの3つのサブテーマを推進した。取り組みの核心は、観測ビッグデータにより改善された初期条件を用い、極端気象予測に不可欠な積乱雲やメソスケールシステムを正確に再現する高解像度シミュレーションである。これにより予測精度が向上し、確率情報の精度向上と統合を通じて、災害リスク管理の強化と予測の実用性向上が期待される。また、本研究では、従来の気象データに加えて微量ガス観測のビッグデータを活用し、革新的な数値気象予測および大気環境予測技術の開発を目指した。