生態系におけるδ15Nの分布則と動物臓器の同位体データ:同位体的に秩序化された世界の構築に向けた展望
- Keywords:
- Animal-organ δ15N, Stable isotope descriptive schema, Feeding dynamics, Oxidative deamination
これまで、生態系および生物体における安定窒素同位体比(δ15N)と安定炭素同位体比(δ13C)の分布と変動に関する経験的関係が観察されてきた。本研究では、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を含む多様な動物の内臓器官におけるδ15Nとδ13Cの値を調査した。これらの臓器のδ15N値は、筋肉の値から±4‰の範囲内で変動する。一般に、脳と心臓のδ15N値は、筋肉の値よりも高い傾向にある。ただし、鳥類ではこの傾向が逆転している。これは、鳥類では排泄されたアンモニアが盲腸で再利用されていることを示唆している。私たちは、筋ミトコンドリアにおける栄養段階にともなうグルタミン酸の同位体分別を8.0‰に維持する、脱アミノ化窒素同位体比に関する動的モデルを提案する。骨格筋、心臓、脳におけるδ15Nの差は、生物間で明確に現れる。これは、これらの器官を構成する細胞の形状と組織が著しく異なり、同器官に分布するミトコンドリアの量と形状が動的に変化するためである。こういった事実は、動物の成長生理学における臓器δ15N変動の意義を解明する最初のステップとなるだろう。生物体における完全な個体レベルと臓器レベルでのδ15N変動の証拠は、今後、古生態学とその環境条件を調査するための新たな広範なアプローチを提供する可能性がある。