西部北極海マッケンジートラフおよびバローキャニオン地域における完新世堆積物の速い堆積
- Keywords:
- Sediment cores, Sedimentation, Lithology, Age model, Sedimentation rate, Cs-137, Pb-210, C-14, Arctic, Beaufort sea, Chukchi sea, Holocene, Anthropocene
北極の環境について劇的な変化が報告されているが、これらの変化が過去の自然変動と類似しているかどうか、または自然変動と比較してどの程度急激で大規模な変化であるかは不明である。産業革命の前と後の海洋および陸域の環境の全体像を明らかにするために、2022年の夏に西部北極海のカナダの大陸棚とアラスカの上部大陸斜面に位置する4つの地点で堆積物コアを採取した。堆積物年代は、堆積物137Cs放射能と軟体動物殻の14C濃度の測定に基づき決定した。137Cs放射能は、西暦1950年に明確な上昇を示し、1963年に顕著なピークを示した。その顕著なピークの上位層には複数のピークが現れ、1986年と2011年の原子力発電所事故と一致した。過剰210Pbのインベントリーは、大気沈着による過剰210Pbの供給量推定値を超えている。これは、北極海深層の210Pbの寄与が大きかったためと考えられる。137Csと放射性炭素年代を比較することにより、各サイトのローカルな放射性炭素貯蔵年代値(ΔR値)を推定し、ベイズ推定法により年代-深度モデルを確立した。MT1、MT2、BC2、およびBC2-2サイトにおける最適なΔR値は、それぞれ598年、511年、65年、および–60年と求められた。コアの堆積物は粘土質シルトであり、堆積速度は0.17〜0.74 cm y-1と極めて高い。Ca/Ti比の変動は、約20年、約30年、50~60年、100~125年、300年の周期を示しており、これは北極海への太平洋水の流入を制御するアリューシャン低気圧の変動に起因する可能性が高い。これらの堆積物は研究目標に合致した貴重な試料であり、北極海の高解像度・多指標研究に活用される。