地質試料のための走査型SQUID磁気顕微鏡:システムのさらなる改善と後処理ソフトウェアの開発
- Keywords:
- Scanning SQUID microscopy, Magnetic imaging, Calibration, Wiring, Drift correction Median filter, Flux jump, Sapphire rod, Magnetic dipole, Upward continuation
我々は2015年に地質試料の磁場イメージングのための走査型SQUID(超伝導量子干渉素子)磁気顕微鏡を開発し、継続的改良を続けてきた。導入以来、走査型SQUID顕微鏡システムは、海底の鉄マンガンクラスト・マンガン団塊、磁鉄鉱包有物を含むジルコン単結晶粒子、断層岩試料、磁化の弱い鍾乳石、強磁性鉱物を含む超塩基性岩など、様々な地質試料の測定に使用されてきた。本論文では、システムの改善と、測定および後処理ソフトウェアの開発の詳細を紹介する。まず、サファイアロッド上のSQUID素子の実装と電気的接続を改善した。これはアルミニウムワイヤボンディングと銀ペーストを組み合わせたもので、冷却加熱の繰り返し前後で接触抵抗の低減と安定化をはかり、素子感度と装置運用の安定性を実現した。改良システムでは、センサ-試料間距離が最短で約125μmを達成し、感度と分解能が向上した。また、電磁シールドや接地を改善し、S/N比向上をはかった。後処理ソフトウェアも開発し、様々なドリフト補正アルゴリズムにより、マージンが狭い場合や磁性を帯びたダストで汚染されたマージンなどに柔軟に対処可能となった。スパイクノイズはメディアンフィルターで除去可能であり、フラックスジャンプは独立アルゴリズムで補正可能である。磁気双極子フィッティング機能を用いることにより、磁気双極子の位置・強度・方向を1つずつ計算可能である。フィッティングを複数回行うことにより磁気双極子のリストが作成され、磁気画像から磁気双極子成分を差し引いて、さらにその後の分析のために磁気画像のクリーンアップが可能である。上方接続により、異なるセンサ-試料間距離で測定された磁気画像を統一的に扱うことが可能となった。これにより、異なる消磁レベルの比較・減算が可能である。磁場のZ成分からX・Y成分の計算も可能であり、さらに全磁力画像生成により、磁化物質の位置の特定が容易となる。