日本語要旨

2020年アラスカ半島沖サンドポイント地震に伴った非地震性津波の初期海面変動

アリューシャン海溝の地震空白域周辺で2020年と2021年にM7.6以上の地震が3回発生した.2回目の地震では,地震規模から予測されるよりも大きな津波が発生し,断層運動だけでなく,さらなる津波波源が存在する可能性を示唆された.本研究では,M7.6の2020年10月の地震(2020年アラスカ半島沖サンドポイント地震)で観測された津波について,断層運動に関連しない非地震性成分の津波波形を取り出し,津波インバージョン解析を用いて初期海面変動を推定した.非地震性津波が地震性津波と同時に発生したと仮定した解析では,現実的な初期海面変動は得られなかった.一方,非地震性津波が地震性津波より5分遅れて発生したと仮定した解析では,陸側が沈降し,海溝側が隆起する単純な隆起沈降パターンが得られた.海底地すべりの規模と初期海面変動の経験式を用いて海底地すべりの規模を見積もったところ,厚さ約500m,長さ約8.0km,幅約60km,体積約120km³の大規模な海底地すべりが必要であることがわかった.アリューシャン海溝に関するいくつかの研究によれば,過去の津波が海底地すべりによって増幅されたことが示されている.これと同様に,2020年に発生したアラスカ半島沖サンドポイント地震においても,海底地すべりが生じ,大きな津波を引き起こした可能性がある.