日本語要旨

国立環境研究所と協力研究機関の観測ネットワークによる大気中メタンの長期変動と年々変動

気候変動に対する実効的な対策のためには、メタンを含め、温室効果ガスの全球収支についての正確な理解が必要である。放出源・消失源の強度・分布の推定のため、大気観測データは重要な制約であり、大気化学輸送モデルを用いた研究に活用されている。大気観測ネットワークによる長期観測から、大気中メタンの十年規模の変動や、年々変動、季節変動が明らかにされてきた。2020年には、過去最大のメタンの年増加量が観測されたが、その原因はまだ未解明である。本研究では、国立環境研究所と協力研究機関の観測ネットワークのデータを用いて、大気中メタンの変動を解析した。地上、移動体、人工衛星のプラットフォームにおいて様々な測定法を用いて得られたデータセットを解析すると、これまでに報告されていた大気中メタンの過去の変動や、近年の顕著な増加、空間分布が確認された。2020年から2022年の持続的なメタン増加は明瞭に示され、最大のメタン増加量は2021年に見られた。2020年の大気中メタン増加は北半球中高緯度で明瞭だったが、2021年と2022年には顕著なメタンの増加は南へと移動した。本研究は、国立環境研究所と協力研究機関の観測ネットワークのデータを用いて、大気中メタンの時空間変動を定期的かつ正確に特徴付けられることを示したものであり、メタンの全球収支推定の改善に貢献すると期待される。